物語を知らない。

ライフ

タバコの煙で輪っかを作ってくれたこと。

コーヒーをスプーンで飲ませてくれたこと。

ローマ字を教えてくれたこと。

将棋を教えてくれたこと。

バイトで遅くなったら家の前で待っていてくれたこと。

認知症になってからは、20~30代の女性すべてを私の名前で呼んでいたこと。

話せなくなってからは、まっすぐ、小さい子供のような目でこっちを見つめていたこと。

話した記憶はほとんどなくて、思い出すのは風景のような姿ばかり。

思えば私はじーちゃんの物語を知らない。

実家の祖父が亡くなった。

(PexelsによるPixabayからの画像)

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