『夢をかなえるゾウ』の著者、水野敬也さんの本です。基本的な構成も『夢をかなえるゾウ』と同じで、ある日突然、(自称)恋愛神様(スタンダール)が見えるようになった主人公が、若干疑いながらもスタンダールのアドバイスに従って自分磨きをはじめ、運命の恋を進展させていくというストーリーです。随所に散りばめられたユーモアはしっかり面白いし、アドバイスも的確かつ辛辣で身につまされる一方、最後はめっちゃ泣きました。
私はだいたい本を読むとき、「はじめに」→「あとがき」→「本文」の順で読むのですが、この本ばかりは「あとがき」をちゃんと読後に読むんだったー!と多少悔やみました。あくまで実用書ではなくて、小説スタイルなのでいわゆるネタバレしてしまったんですよね。自分で。つまり自損事故です。
しかし、結末を知っていても十分楽しめて泣けて、恋愛に限らず人とかかわって関係を築いていく面白さ、大変さ、素晴らしさ、を今更ながら再確認できました。タイトルの「ヴォレ!」というのは「飛ぶ」という意味のフランス語らしく、作中でスタンダールが主人公にアドバイスする言葉です。変わろうとするとき、これまでと連続性を持たせてちょっとずつ変えていくのではなく、飛躍させる。飛べ!と何度も言われまくっている主人公をなんだか自分とも重ねてしまいました。結局のところ、変わりたい気持ちを実現できないのは、人目を気にしているんですよね。
急に変わったら周りに何て言われるか(ちなみに主人公は「色気づくんじゃねぇよ」と言われます)、不安な気持ちを天秤にかけて、「今まで通り」を選びそうになるとき、今でも私の頭の中でスタンダールの「ヴォレ!」が聞こえます。
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