【書評】マジで、頭の中が”凪”になる『それ、あなたのトラウマちゃんのせいかも?: あなただけの超簡単な言葉を唱えるだけで“いまここ”で楽になる!』 大嶋 信頼 (著)

書評

この本を読んだ後では、この世のあらゆる「精神疾患」と呼ばれるものは、単に解離の程度とパターンの違いなのでは?とすら思える。解離というのは自分の感覚が身体から離れてしまって、「今を生きている感じ」が希薄になること。

そう書くと、解離というのは大層なことのように見えますが、だれだって「今日の晩御飯何にしようかなぁ」とか、「あの仕事ちょっとミスっちゃったなぁ」とか、「今ではないこと」を考えながら歩いていることがあると思います。それだって軽い解離ですし、「他人からどう見えるか?」を気にしすぎて、自分の気持ちを感じ取れなくなっていることもあります(私は結構これだったと気づいた)。

この本がすごいのは、これらいろんな解離の状態から「今、ここ」に戻ってくる、めちゃくちゃ簡単な方法が示されていて、しかもその効果が抜群なところです。

そもそも解離してしまうのは、こころの底に根本的な恐怖があって、そこから目をそらしたいから。回避行動として、一生懸命、未来のことや過去のこと、他人のことを考えることで「今」を感じないように頑張っている(今に向き合うと恐怖を感じてしまうから)。

この本でメインになるのは「○○の恐怖」という呪文の、○○に当てはまる自分だけのキーワードを見つけて、解離してると気づくたびに七回唱える、というすごいシンプルなメソッドです。どんなときに解離しているか、などから推測して、自分にピッタリくるキーワードを見つける作業を自分でもやってみましたが、私の場合は「孤独の恐怖」でした。

他人の目が気になるのは、「嫌われて孤独になりたくないから」。いつも一生懸命他人の気持ちを考えていて、時には感謝されたり、気が利くと言われたりもしましたが、正直苦しかったです。だって他人の気持ちを考えている理由は、本当にその人を大切にしているわけではなくて、「自分が嫌われたくない」というものすごい自己中心的なものだと、薄々は気づいていましたから。どこかでそれがバレてしまわないかといつも心配で、ますます自分の「素」を出すことができず、誰といても疲れてしまう感じでした。

「恐怖は目をそらすと増幅する」「ちゃんと向き合うと消えていく」と著者は繰り返し述べています。そして、普通なら難しい「ちゃんと向き合う」を、呪文を唱えるという作業に置き換えることによって、誰でも習慣的に取り入れられるように導いてくれます。そして唱えるうちに、いつも頭の中で繰り広げられていた独り相撲や妄想合戦、心配連想ゲーム(私が勝手に名付けています)がピタリと止み、どこまでも静かな水面が広がっていくような「凪」が訪れる瞬間が来ます。「え、世界はこんなに静かでシンプルだったのか」と驚愕します。そしてそれが、めちゃくちゃ嬉しい。

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