なんか適当に物語を作って。
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谷底のような落ち込んだ土地に虫取り少年が立っていた。
と言っても虫取り網を持っている、というだけで、その他は上等なレストランにでも入れそうなきちんとした身なりをしていた。
少年は「お父さんを待ってる」と言った。
あたりは深い青色に包まれ、新しい夜が迫っていた。少年は目の前の湖のほとりに腰を下ろし、私も隣に座るよう促した。
湖も、空も、木々もすべてが美しい青色をして、濃く暗く見えなくなるのが楽しみなくらいだった。
「私では代わりにならないかな」と聞いてみたら、少年は「だってお姉さんは女の人じゃん」と軽やかに笑った。
「こんど、栗拾いを一緒にやろうよ」
頭上には零れそうに星が輝いていた。